卵の殻は美しい
朝目玉焼きを作る時、卵の殻が綺麗に割れたらいい気分で1日を始められる。綺麗な曲線、真っ白な表面、脆さ、当たり前のように目にしていて気づかなかったが、なかなか不思議な素材だと思った。この魅力を引き出すにはどうしたら良いだろうか。
卵の殻を塗ってみる
まずは卵の殻を細かくしてみて、左官塗料のようにしてみようと考えた。まず卵の殻を大まかに手で砕き、ビール瓶のようなものを使いさらに細かくしていく。その後、バターミルクペイント(水性の塗料)、木工用ボンドの3種類と混ぜたものを作り、それぞれ塗ってみる。
コンクリートは砂利の中に卵が埋もれてしまい、全く綺麗にならない。バターミルクペイントは、卵の殻の凹凸を際立たせ、ゴツゴツしているのに柔らかさがある、ぬくもりを感じるテクスチャーとなった。しかし、卵っぽさは消えてしまっている。木工用ボンドでは、艶によって卵の質感が際立ち、綺麗さと卵の殻っぽさを両立させることができた。
この実験の木工用ボンドの結果から、卵の殻本来の色、艶、緩やかに丸みを帯びた形を活かすことが卵の空の魅力を引き出すために重要であることに気づいた。そして、それらを美しく見せる方法を考えるなかで、テラゾータイルのつくり方に着目した。
テラゾー×卵の可能性
テラゾーといえば、イタリアで発症した塗り仕上げの工法の一つである。細かな自然石がランダムに散りばめられたテラゾーは、深みのある独自の世界観を醸し出す。近年では、そんなテラゾーを再現した最新のタイルが注目されている。それは、自然石の代わりに廃プラスチックやガラスをタイルチップとして再利用するというものだ。このことから、卵の殻をタイルチップとして使い、テラゾー仕上げにすることで、卵の殻の魅力を引き出すことを試みた。
不均一な宝石
まず、白モルタルを水と混ぜ、その中に卵の殻の破片を入れ、混ぜだ後に型に流す。速乾のモルタルを使ったため2時間ほどで乾くはずだったが、卵の殻を混ぜ込むために水を多めに使ったため、最初に作ったものは最後に型から外すときに割れてしまった。そのため、次に作ったものは1日寝かせ、その後やすりを使い表面を削った。5~6分削ると、表面に卵の殻が浮かび上がってきた。徐々にヤスリの目を細かくしていき、800番まで磨いた。卵の殻本来の艶、丸み、色が際立ち、宝石のように散りばめられたタイルが完成した。
赤玉から新たな発見
色付きの殻ではどうなるのか調べるために、赤玉の殻を使って作ってみた。赤色が映えるように、モルタルには黒い色素を入れた。ヤスリで削り出す過程で、殻の色が削れてしまったり、殻の内面の白い部分もランダムで現れた。予想していた結果と違い、最初は失敗かと思ったが、赤玉を削ることでしか現れないこの模様が逆に新しい発見になった。
卵の殻は美しい
卵の殻は、その中身を守るための天然の建材である。均一に割れないからこそ、人工物には出せない独特な色、艶、形が生まれる。この素材は、今後人間の生活環境に取り込んでいける可能性を秘めていると思う。