Save shape
きっかけ
過去の記事の中に、炭に関する研究結果があった。
炭は、素材の形をそのまま封じ込めることができ、また独特の触り心地や艶などを与えることができるのことが魅力だと感じた。
ただ、通常は炭は木材からしか使われることがないので、他の素材でも炭にしてみたり、もしくは炭に代わる保存方法がないものかと疑問に思った。
食べ物の形に魅力を感じることが多かったのでまずはいろいろな食べ物を炭にしてみようと思った。特に、普段は捨てられてしまうような素材であり、いつも食べ終わった後が抜け殻のようで可愛いなと思っていた落花生の殻や、バナナの皮、貝殻などを炭にしてみたいと思った。
炭にしてみる
過去のリサーチを参照して、ガスコンロ、アルミホイル、スチール缶から炭を作った。落花生の殻は30分ほどで完成したが、バナナの皮は水分が多く1時間ほど火にかけたが炭にすることができなかった。また、アサリの貝殻もカルシウムを基本成分としているためか、炭にはならなかった。炭にした際に炭にでできたオイルのテクスチャはさらさらしていた。炭になったピーナッツを潰してみると柔らかいテクスチャだった。炭へと変化した落花生は元の形を保ちつつも色や香り、雰囲気は全く異なり別の表情を見せた。しかし、その表情の変化に魅力を感じつつ、やはり炭にしてしまうと、全ての素材が上記と同じようなテクスチャになってしまい、素材ごとの表情に乏しいと感じた。
乾燥させてみた
炭の実験から、自分の好きな形であるフルーツのカットした姿を保存したいと思った。フルーツのカラフルさを残すために炭ではなく次は乾燥させて保存をしてみたいと思った。キウイ、レモンの断面が特に好きなのでその2つを乾燥させてみた。どちらも乾燥させるのに約2週間ほど時間がかかった。キウイは乾燥させるとポソポソとしたテクスチャになりあまり綺麗ではなかった。レモンの断面は綺麗に残ったが色が暗くなり匂いが独特だった。
そこで色もそのまま残せないかと考えリサーチをした結果乾燥シリカゲルに入れると色も綺麗に残っていた記事があった。実際にやってみると約2週間かけて完成した。レモンの果実の部分にシリカゲルがくっついていて、乾燥しきっっているかの確認が難しいのが欠点ではあるが色は自然乾燥よりも一段と綺麗に保存することができた。しかし、自然乾燥であれば乾燥していた厚さのレモンがシリカゲルでは乾燥しなっかた。さらに時間をかけてみたが変わることはなかった。
+α
乾燥させただけでなくプロダクトへ繋げようと考えた。レモンの形を何かに閉じ込めることで、腐敗せず半永久の保存が可能になると考えた。ただ閉じ込めるのではなく視覚探索絵本で有名な「ミッケ」のようにレモンが重なり合っていたら面白いなと思い、レジンを使って実際に作ってみることにした。透明度が高く簡単に固まるの2液性レジンを使用した。クリアファイルを使い自分の好きなサイズの型を作成した。一度で固めるのではなく、レモンが浸るくらいにレジンを流し込んだら硬化させる。という作業を3回ほど繰り返し断面で見たときにレイヤーがわかるように作成した。
完成したものは表と裏で違う表情を見ることができ、素材本来のテクスチャを感じることもできる。光にかざすとレイヤーがはっきりと見え乾燥させたからこそつくることのできた表情を生み出せた。
研究から得たこと
これまで美しい造形の保存のために様々な手法を模索してきた。炭にする手法では形自体は変わらなくてもテクスチャが変わるだけで雰囲気が一気に変わる面白さと、同時に素材そのものの造形の美しさを再確認できた。乾燥させる手法では素材本来の形に近い状態で保存するこたができた喜びと他にもいろいろな素材を乾燥させてみたいという興味が湧いた。閉じ込める手法では一手間加えるだけで広がる可能性の多さや、素材の大きさ、重なり方、並べ方で見えてくる表情が全く異なる面白さを感じることができた。追求していた答え以外にそのプロセスで発見できる結果があるということにも気づかされました。
今後は食材だけでなく自然界の美しい造形を保存する手法を模索していきたい。